初心者講習会は横浜の開港記念会館で行われた。講習会とは言うが、午前2時間、午後2時間の座学を経て、その後の考査試験を合格することで猟銃所持への道が開かれる一番最初の関門だ。
前半は火薬から扱っている銃砲店の会長が登壇された。神奈川と東京とを比べて神奈川のほうが銃の所持許可が下りやすいといった座学を始め、教本において重要な部分をダイジェストで教えてくれる。
昼食休憩を経て、後半は、実際の問題における「引っかけ」の意図などを教えてくれるので、そこについてはそのまま素直に教わったとおり問題に答えたほうがいいらしい。深く考えすぎると負けというヤツだ。なんだか原付の試験みたいだ。
その後、試験があった。1回解き終わって、もう1回解いてみてもまだ早退時間になるまで時間が余った。早めに退室していい時間となると私を始め幾人かが立ち上がった。
待つ間に、この原稿を備忘録代わりに書こうと思い立って書き始めた。
試験結果を待つ間、同時に講習会を受けていた知人が言った。
「この試験って、試験そのものじゃなくてそれ以前の受講態度とかも見てるんじゃないのかな? 寝てたら落とされるとか」
「まさかそれはないでしょう」
と私は答えた。実際どうだったのかは今でもわからない。待っている間に別の受講生も話しかけてきたが、その人は解答に自信がないようだった。
そもそもこの講習会、前回はほぼ全員合格だったらしく、私自身問題を見てもそれほど難しくないと感じていた。だが、自信がなさそうだったその受講生はなんと落ちていた。他にも数人落ちた人がいた。
その後、受講証を手渡しされるのだが、そこには神奈川県警の生活安全課の警察官が来て話をした。
「これから起きることは、今まで皆さんが行政に接していたものとは違います。行政は申請があれば許可をするのがほとんどですが、銃の所持許可はまったく違います。徹底的に調べます。おかしなところがあったら絶対に許可は下りません。調べるのは所轄の担当署員ですからその人とのコミュニケーションをしっかり取ってください。犯歴の記載とかでウソを書いて通そうという人が非常に多いですがすぐにバレます。犯歴未満であっても警察に履歴がないかを調べます。必ずすべて担当署員に申告してください。担当者に申告せず、担当者が調べてわかった場合、心証は悪くなりますから」
これを聞いたとき、いくつか思うことがあった。M氏の言ったとおり、今回のことは「試験で何点を取れるか」ではなく「入口でヤバイやつをしっかり落とす」ことなのではないか、と。
実際にあった話では、その後の身辺調査において、趣味で「草野球」とだけ言った人物が、警察署で担当署員と話をしたときに「チーム○○は結構強いみたいですね」と告げてもいないチーム名まで調べられていたという。
私は「銃を持っても問題ない」と、まったく見知らぬ誰かから太鼓判を押されるような人間だったろうか? 後ろ暗いことなどひとつもないと言い切れるだろうか? もちろん、一度の過ちでその後のすべてがダメになるなんてことはないのだが、自分自身の失敗をごまかしたりすれば絶対に銃は持たせない、という警察の強い意志を感じた。